レポート
創業期はもちろん安定成熟期でも、会社経営で常に課題となるのは「働き方と組織づくり」。早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター招聘研究員の二宮朋子氏が進行を務め、まず聞いたのは「経営していくなかでの壁」を越えたポイントについて。
企業向けの女性活躍やダイバーシティの研修コンサルテーション、大学生向けのキャリア教育などを手掛けるスリール株式会社代表取締役の堀江敦子氏が挙げたのは、先行していた自社事業に対し「マーケットが広がったタイミング」です。
「2019年にコーポレートガバナンスコードが変更され、今まで『女性活躍って数字だけかな』くらいの認識だったものが『どんな属性であっても、本質的に活躍できる人材を育てる』と言われ、株主の投資判断に直結するようになった瞬間からですね。主に大手企業から、マーケットが広がっていった」
女性に特化した法人向け営業のアウトソーシング、営業DXの伴走支援、女性管理職・女性役員を増やしていくための研修コンサルティングなどを手掛けている株式会社Surpass 代表取締役社長の石原亮子氏は「女性の強みでもあり、弱みでもあるのが『一人のリーダーに全部ぶら下がる』、いわゆる文鎮型経営になりがちなことですね」と語ります。
「会社が小さいうちはいいけれど、ある時急にそれが成長のボトルネックになる。男性のようには階層型組織を作っていけないんですよね。うちも5年目に組織崩壊して15人が0人になったり、80人まで増やしたのが50人に減ったりとか、何回もコケました」
TVアナウンサーから外資系コンサルを経て人材紹介会社を立ち上げ、現在はネイルなどの美容商材も手掛ける株式会社ノンストレス 代表取締役社長の坂野尚子氏は、「オペレーションを任せ、自分は新しいこと、次のことを考えるのに専念できるようになって、ようやく『組織ができたな』と実感」したとのこと。しかしその一方で、「実はまだダイバーシティのある組織じゃないんです。95%が女性という組織で、男性だけではなく、LGBTQ、障がい者、様々な方に来ていただこうとプッシュ型で遂行してきましたが、正直『マイノリティである男性が定着しない』のも目の当たりにしています」と、女性の多い企業ならではの課題があることも明かします。
社内研究所を立ち上げ、「10年後の働き方はどうなっているか」を想定しながら人事制度設計を担当、東京くらし方会議の委員も務めるリクルートワークス研究所 グローバルセンター長・主幹研究員の村田弘美氏は、リクルートの創業期・成長期に実施された「心理学的経営」を取り上げます。
「社員皆経営者主義、全員が経営者だと従業員に刷り込んでいるんです。新入社員でも入社3年目の事務員でも、『自分が経営者だ』と思えば、まずBS/PLを読み、どういう風に会社に貢献していけるか考えるようになる。自社の発達段階が今どこにあるのかを確認して、これからどういう組織を作るべきか、どういう働き方をすると従業員が定着するのか、といったことを踏まえることが今後必要になってくるんじゃないかと思います」
ここで二宮氏は「村田さんご自身にも『自分が経営者だ』という意識がなければ、研究所を立ち上げることはなかったと思う」と分析し、石原氏に「従業員の皆さんは、会社を経営者視点で見ていますか」と尋ねました。
「最初からいるメンバーと、100人を超えてから入ったメンバーはやっぱり全然感覚が違う」と石原氏。まず働きやすさを求める最近の傾向は認めつつも「いつどういう状況になるかわからないので、いつでも自立できるような学びの視点、スタンスは持っていてほしいと伝えている」といいます。
また堀江氏は、ご自身が産休に入る準備をきっかけに「従業員に経営視点を」と意識したと語ります。「休みを取る前に合宿の形式で経営ビジョンを確認したり、BS/PLも見せたり。最近では数字が苦手な従業員のために経営ゲームなども取り入れながら、組織を作っていっています」
坂野氏もPLの透明化や、新任店長に「あなたのお店を作って」と声かけすることで経営視点を喚起しているといいます。「自分が上の立場になった時に『上から下は見えるけれども、下からは上が見えない』と気づくんですよね。レイヤーを上がっていくうちに見える景色が違っていく。それを自分たちで考えることが組織の大きな成長につながるんじゃないかと」
こうしたお話を受け、二宮氏は再び村田氏に「『あれをやるとこれが難しく』といったことの繰り返しが組織かと思うんですけれども、どんな風に運営していくといいとお考えですか」と問います。村田氏は組織の階層や個々のワークライフバランスなど内側を見ることも重要だとしながら、その上で「『お客さまが幸せになるにはどうしたらいいか』という外向きの視点が大事」とまとめました。
1983年リクルート入社。1999年にリクルートワークス研究所を立ち上げ、2013年より現職。
2019年厚生労働省雇用類似の働き方に係る論点整理に関する検討会委員等、労政記者クラブ代表幹事、日本テレワーク協会アドバイザー等。
専門は外部労働市場、フレキシブル・ワーク。
短大卒業後、大手生命保険会社でトップセールスとして活躍。一部上場企業からベンチャー企業まで100業種以上の営業実績を持つ。
2008年8月 株式会社Surpassを創業。LTV(永続的な信頼関係と売上の構築)を重視した女性による営業アウトソーシングのパイオニア。
2021年、営業DXと女性育成ノウハウを活かし、徳島市やさぬき市とジェンダー格差改善を目指した連携協定を締結。
「Forbes JAPAN WOMEN AWARD 2017」企業部門第3位の受賞を始め、女性が活躍する企業として多くの賞を受賞。
「EO Central Tokyo」理事 、東京都 女性起業家活躍推進プロジェクト「NEW」メンターなど起業家支援機構でも幅広く活動している。
国際基督教大学を卒業後、フジテレビアナウンサー、NY特派員を経て、コロンビア大学MBA修得。
外資系コンサルティング会社KPMGでディレクター勤務後、94年から1つ目の(株)キャリア戦略研究所起業。
その後、96年「ザ・クイック」(05年1月より「ノンストレス」に社名変更)を設立。
全国展開のネイルサロン「ネイルクイック」とその姉妹店の「ネイルパフェ」、「スパネイル」を経営。コロナで、店舗を20近く閉店し、コロナ前にはNYでも7年営業していた。
化粧品「スパネイル」や「ネイルパフェジェル」のジェルメーカーとしても展開。
新規事業として、OCULI(ラテン語で眼のこと)の事業を開始。経済産業省 産業構造審議会 委員。
2007年日本女子大学社会福祉学科卒業。立教大学大学院経営学研究科(リーダーシップ開発コース)修了。
大手IT企業勤務を経て2010年25歳で起業。仕事と子育ての両立を体験するインターンシップ「ワーク&ライフ・インターン」の事業を展開。経済産業省「第5回キャリア教育アワード優秀賞」を受賞。
現在は、“女性活躍から始めるサスティナブル経営の支援”をコンセプトに、法人向けの女性活躍・ダイバーシティ推進、研修・コンサルティング、行政・大学向けのキャリア教育を展開している。
内閣府 男女共同参画会議専門委員、厚生労働省 イクメンプロジェクト委員、こども家庭庁・こども家庭審議会委員など行政委員を多数経験。
著書に『新・ワーママ入門』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、Human Capital Online(日経BP 運営)にて「女性活躍から始めるサステナブル経営」を連載。
宮崎県出身。慶應義塾大学在籍中にキー局リポーターを務める。卒業後は地元放送局のアナウンサー、全国紙の新聞社を経て、アパレルを中心に国内企業の女性活躍を推進。
自身も出産後4ヶ月で早稲田大学院へ入学しMBAを取得。成績優秀者として表彰を受ける。
組織におけるダイバーシティ/SDGsを重視し、大学や研究機関にも活動の場を広げながら、LGBTQ+の観点を加えたマネジメント研修や人事制度の構築を手がける。
開催日時 | 2022年11月20日(月)13:00-18:10 |
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会場 | 【リアルイベント】 東京国際フォーラムD7・G404・G405・G407・G408(東京都千代田区丸の内3丁目5−1) 【ライブ配信(オンライン)】 ZoomとYouTubeによるライブ配信 |
対象 | 企業・団体の代表者、経営者層、個人事業主など(男女不問) |