レポート
初めて社員を採用するときに、どのような課題があり、乗り越えたのか。「ひとりめを雇う」というテーマで話し合うセッションでは、働き方改革のコンサルティングを行う株式会社ワーク・ライフバランス取締役・パートナーコンサルタントの大塚万紀子氏が進行を務めます。「私たちの会社は、2006年に創業いたしました。1人目の社員を迎え入れた頃は本当にバタバタしていて、経営者として始まったばかりの右も左もわからないなか、二人三脚で会社をつくってきたと思っております」と振り返る大塚氏。
2006年に人材派遣会社として創業、現在は医薬品の原料等を扱う専門商社として成長しているATTO株式会社。代表取締役の青山今子氏は、「貿易の仕事を始めて、英語ができる人を雇いました」と当時を語ります。
「最初は会社の基盤が整っていないので、1年間は時給でやって欲しいということを理解していただき、大塚さんの言葉にもあったように二人三脚でもう必死でした。翌年は順調に成長したので、厚生年金、社会保険に加入して正社員として採用しました」
株式会社COCO&COMPANY 代表取締役社長の吉田なる氏は、2016年に「心を癒やす」ヨガを届けたいという想いから「COCOYOGA」を開業。オープンして2か月で利用客が増えたことで、採用を考えたといいます。
「最初に5人のフリーランスの方を採用しました。ヨガ業界はフリーランス志向が強く、正社員になりたがらない人が多いんです。5期目のときに初めて正社員の採用をしたんですけど、そのときは本当にひたすらお願いをしました」
軒先株式会社代表取締役であり、「スキマハンター」の異名を持つ西浦明子氏は、2008年に日本初のスペースシェアリングサービス「軒先」代表としてサービスを開始、2009年に軒先株式会社を設立してから、初めての採用を行っています。
「最初は夫と2人で1軒1軒回って、『空きスペースを貸してくれませんか』とお願いしていました。当然のことながら、そんな人海戦術では限界があるということで、出資してくださった株主の方の紹介で1人目の営業マンを採用したのが最初の雇用でした」
大塚氏が「この場限りでしか聞かせていただけない、大変なこともあったと思います。せっかくなので、そのあたりも掘っていきたいと思います」とリードし、次の展開へ。
吉田氏は、スタッフ全員が自分よりも年上だったために、関わり方で悩んだと語ります。
「一人一人が私にどう接してほしいのか、自分がどうありたいのかというのを、丁寧に擦り合わせていきました。でも、先輩経営者に『それは社長の仕事ではない』と言われて自信をなくしたり…。あの頃の自分に『あなたはそのままでいいんだよ』と、言ってあげたいですね」
「私は自分より年上のスタッフをマネジメントするという経験はないのですが、確かにご苦労があるでしょうね」と、西浦氏がうなずきます。そして、優秀な社員が突然退社してショックを受けたエピソードを語り、「経営者として一緒にもう一年やっていこうという思いを持たせてあげられなかったのは、やはり私が未熟だったせいだろうなということを、しみじみとかみ締めた思い出があります」と、当時を振り返りました。
「数年前、私も似たような経験をしました」と話を継いだのは、青山氏です。「ですので、今は年に2回、個人面談を行うんですね。何か困ったことはないか、意見はあるか、この会社をどうしていくのかなど、情報共有しています。弊社の場合は60歳や65歳で定年ではないので、あなたさえ健康で働きたいなら、将来性を見据えながらずっと一緒にやっていきましょうということを伝えています」
さらに話題は、企業文化を伝えるということ、社員にどこまで「自由」を許容するか、採用した人材がうまく活躍できなかった場合にどうするのかなど、リアルな体験とともに活発に意見が交わされていきました。
終了時間が近づき、経営者の先輩として参加者へメッセージが送られます。青山氏からは「やるからにはとことんやっていきましょう、ということですね。頑張れば報われるという、その一言に尽きます」と清々しい言葉が。吉田氏からは「腰を引き過ぎず、好きなことがあって成し遂げたいことがあるのであれば、まずはリスクを少なくやってみてもいいんじゃないかなと思います」、西浦氏からは「正社員にこだわらず、事業に共感してくださる様々な形での仲間作りを、積極的に心がけるのが一番いいかなと思います」と、前向きなエールが送られます。
大塚氏は最後に「私たち経営者は、1人だけだとある程度のところまでしか行けないんだろうなと思います。やはり、2人目、3人目というふうにメンバーが増えていくなかで拡大できる事業、伝えられる想いもあると思いますので、ぜひその機会をうまく使ってジョインいただけたら」と笑顔で締めくくり、貴重な経験がシェアされた分科会が終了しました。
上智大学外国語学部卒業後、ソニー(株)入社。海外営業部に所属。ソニーチリに駐在、オーディオ製品などのマーケティングを担当。同社を退社後帰国。創業時のAll About Japanで広告営業を経たのち、(株)ソニー・コンピュータエンタテインメント商品企画部にてプレイステーション2やPSPのローカライズ、商品開発などを担当。妊娠・出産を機に起業を決意。2008年4月に日本初のスペースシェアリングサービス「軒先」代表としてサービスを開始、2009年に軒先株式会社を設立。ポップアップ向けスペースシェアの“軒先ビジネス”、駐車場シェアの“軒先パーキング”、飲食店シェアの”magari”を運営。2017年総務省ICT地域活性化大賞・奨励賞受賞。現在、全国の遊休スペースの活用提案に奔走。
1995年 来日
2001年 国学院大学経済学部経済学科卒業
2001年 NTTコミュニケーションズ(株)入社
2006年 日本ATTO有限会社を設立し、代表取締役就任
2008年 社名をATTO株式会社に変更
2010年 中国に重慶事務所を設立
2012年 重慶事務所を現地法人化し愛拓化工(重慶)有限公司を設立
2015年 中国に上海事務所を設立
フィットネス要素の強いヨガが主流だった2016年に「心を癒やす」ヨガを届けたいという想いからCOCOYOGAを開業。コロナ禍で多くのスタジオやジムが閉業するなか、顧客とのつながりを重視する経営理念や新規事業を展開するなどをして、事業は成長中。
現在は、テレビ東京なないろ日和・東京MXバラいろダンディなどでレギュラー・準レギュラーを務めるほか、複数の女性誌でも活動中。
プライベートでは、保護犬と暮らす大の犬好き。
株式会社ワーク・ライフバランス 取締役・創業メンバー・パートナーコンサルタント。金沢工業大学大学院客員教授。財団法人生涯学習開発財団 認定コーチ。一般社団法人日本MBTI 協会認定MBTIユーザー(Japan-APT 正会員)。自らのマネジメントスタイル変革の経験や、高度なコーチングスキル、コミュニケーションスキルを活かし、様々な働き方改革を効果的に遂行している。中でも多くの経営者から“深層心理まで理解し、寄り添いながらも背中を押してくれる良き伴走者”として厚い信頼を得る。内閣府、経済産業省、敷島製パン(株)、(株)リクルートスタッフィングなどで働き方の見直しコンサルティングを提供し、好評を博している。農林水産省「食品産業戦略会議」委員(働き方改革分野担当)、神奈川県「地方創生推進会議評価部会」委員なども担当。二児の母。
開催日時 | 2022年11月28日(月)13:00-18:30 |
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会場 | 完全オンラインでの開催(ZoomとYouTubeによるライブ配信) |
対象 | 企業・団体の代表者、経営者層、個人事業主など(男女不問) |