レポート
「この前の小室(淑恵)社長からのたくさんの情報で、皆さん大いに刺激があったかなと思います」と、にこやかに登場した石坂典子氏。柔らかな語り口とは結び付きにくい「産業廃棄物処理」という、厳しい環境下の事業を継いだ二代目社長です。
「元々は自分で新しい事業を興すための資金調達をしようと、お小遣い稼ぎのために父の会社に入りました(笑)」という石坂氏。10年間勤務して1999年、いよいよ事業を立ち上げようとしたときに、周辺の農作物がダイオキシンで汚染されているという報道があり、会社が地域でバッシングを受ける状況に。
「そこで初めて父に、どんな想いがあってこの事業をスタートしたのか聞いたんですね。すると、かつて日本が高度経済成長真っただ中だったとき、お台場に早朝からダンプが100台くらい並んで海洋投棄をしていたと。その光景を見た父が、この社会を変えたい、廃棄物が埋め立てされるのではなく、未来の資源となるような社会をつくりたいと考えた。そして事業を始めたのが、53年前のことなんです」
父親の言葉を聞いた石坂氏は、一大決心。「この想いを継いでいきたい」と素直に思ったといいます。30歳で社長となり、廃棄物処理のみならず、オーガニックファームの運営、子どもたちの環境教育など、柔軟な発想で新たな事業を展開。地域の人々に愛され、世界が注目する会社へと生まれ変わらせていきます。
「社会にはきちんと循環するためのそれぞれの役割があって、その中の一つを私たちが担っている。そのことを多くの方に分かっていただけるよう、さまざまな取組をして現在に至っています」
画面に映し出された緑豊かなイラストマップは、サステナブルな社会を自然のなかで体感できるフィールド「三富今昔村」。現在、年間4万人が訪れる人気スポットとなりました。
事業を継ぐ二代目経営者から、先代への不満などの相談を受けることも多いとか。その時に伝えることは「守破離(しゅはり)」の精神と語ります。
「まずは先代の想いと歴史を、しっかり把握することが大切。会社の伝統や文化を知り尽くす。その中で自分にできることは何かということを考え、そしてそれを破っていく。最終的にそういった形のものがすべて自分の中で見えたとき、初めて新しいことに挑戦できるのかなと思っています」
社長となって18年。「今、180人近い社員がいるんですが、ようやく半数が20代30代という会社になりました」と笑顔を見せる石坂氏。「日本の会社の8割近くが、同族経営で成り立っています。後を継いで経営者で頑張っていこうという皆さんが、ぜひ活躍していただけることを願っております」と、参加者に温かなエールを送りました。
1972年東京都生まれ。
高校卒業後、米国の大学に短期留学。
1992年父親が創業した石坂産業に入社。埼玉県所沢市周辺の農作物がダイオキシンで汚染されているとの報道を機に、「私が会社を変える」と父親に直談判し、2002年社長就任。「社員が自分の子供も働かせたい」と言える企業創りを目指し、女性の感性と斬新な知性で産業廃棄物業界を変革する経営に取組み“見せる・五感・ISO経営”に挑戦している。
2016年日経WOMAN「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2016・情熱経営者賞」受賞。
2018年日刊工業新聞社優秀経営者顕彰「第35回記念特別賞」「優秀経営者賞」受賞。
平成30年度財界「経営者賞」受賞。
エイボン女性年度賞2018「ソーシャル・イノベーション賞」受賞。
開催日時 | 2020年11月16日(月)13:30-18:30 |
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会場 | オンライン開催 |
参加対象 | 企業・団体の代表者、経営者層、個人事業主など(男女不問) |