レポート
日時 | 2020年12月3日(木)15:00~17:00 |
---|---|
講師 |
株式会社ベアーズ 取締役副社長 髙橋 ゆき |
進行 | 株式会社イー・ウーマン 代表取締役社長、株式会社ユニカルインターナショナル 代表取締役社長 佐々木 かをり |
女性経営者たちの学びとつながりをサポートする「TOKYO女性経営者塾 by N E W」。第4回は、家事代行サービスのパイオニアである株式会社ベアーズ取締役副社長、髙橋ゆきさんを迎え、「女性が活躍するための仕組み」をビジネス機会と捉えて起業した視点や、ベアーズの急成長を支えている経営戦略などについて伺います。
「頑張る女性を応援します」というスローガンとともに、あふれる笑顔の髙橋ゆきさんが登場しました。
「家事代行というサービスがこの国の概念になかった21年前、この言葉に共感してくれる方々が集まってくれました。ビジネスモデルも大事だけれど、志を一つにすることほど強いものはない。まずはこれを共有させていただきます」
仕事に育児、さらには介護と、日々頑張る女性たちを支えるため起業した髙橋さん。その原点は、20代の頃の体験にあると語ります。
「短大卒業後に祖母が倒れ、母も入院。働きながら介護をするなかで『どうしたら効率よくできるか』を考え、常に工夫していました。私をここまでにしてくれたのは、その原体験。『私は』と、一人称で語れる自分の人生に、人の役に立てるビジネスのヒントがたくさんあります」
その後は、26歳で両親の会社の倒産・破産処理を一手に引き受けるという過酷な体験も。「私の人生は“まさか”だらけ」と笑う髙橋さんですが、ここでも「あきらめない心の大切さが刻まれました」と、どこまでも前向きです。
ベアーズの創業も、自身の体験がきっかけでした。夫であり現社長である髙橋健志氏とともに香港で生活を始めたときに、第一子を妊娠。
「新しい仕事と育児を両立できるのか不安でいっぱいだったときに出会ったのがフィリピン人のメイド、スーザン。自分らしさを保つことができたのは、彼女がいたからです」
しかし、帰国後に待っていたのは、メイドを雇用する文化が一般的ではない日本の現実でした。
「私の笑顔が減ってしまいました。すると夫が、『スーザンを日本にたくさん創出することが重要なんだ! 女性にとっても、男性にとっても』と。そして『産業をつくろう』という合言葉で1999年に創業し、二人三脚で歩き始めました」
自分だけができることに全力を注ぎ、それ以外のことはアウトソーシングする「新しい暮らし方の提案」。そして家事や育児の体験が活かせる「新しい雇用の創造」。2つの柱による新たな家事代行サービス産業を確立するために奔走しましたが、「当時はビジネスモデルが日本にふさわしくないと言われ、融資を受けることも難しかった」と振り返ります。
創業から3年間は他社で働いて「出稼ぎ」。その間に公園などで一人ひとりに声をかけ、共感してくれる女性を増やすという地道な活動も。家事代行サービスは富裕層のものというイメージを払拭するために、ギフトチケットを販売。2006年からは、各社とのアライアンスがスタートし、2011年頃からようやく一般家庭の利用が増加。20年目を迎えた2019年にはマンション居住者の生活を全般的にサポートする「MAUCHI(マウチ)」をリリース、これから本格始動していきます。
「一歩先ゆく提案型マーケティング」を重視し、家事代行にとどまらず、暮らし全般をサポートする企業へと成長を遂げたベアーズ。挫折や逆境を乗り越え、日本にはなかった概念を創出し、ここまで走り続けた髙橋さんが大事にしていることとは?
「自分の人生にピントを合わせることです。自分は何のために頑張っているのかわからなくなると、焦る必要もないのに無理をしてしまう。目的を整理すればピントが合ってきます。そうすれば、心が穏やかに、笑顔になります」
後半は、佐々木かをりさんがナビゲーターを務めるトークショーです。
「ご両親の破産、創業しても最初は他社で働いたりと、一つひとつのモーメントが大変なときでも、明るく感謝して乗り越えていますね」と佐々木さんが語りかけると、「今、おっしゃった“モーメント”を大事にして、瞬間瞬間に全力投球してきました」と髙橋さんからパワフルな答えが。「私も高校1年から経済的支援を受けずに自力で大学に行って、今振り返ると、頑張ったなと思える時期を過ごしたけれど、全集中で、覚悟をもって着々と進んできたことが力になっていますね」と、佐々木さんもうなずきます。
「自分も夫もテレワーク、子どもも家にいるという状況で結果的に女性たちの負担が増え、ニーズが増えている」というコロナ禍の影響についての現状も語られます。参加者からは「夫婦で創業し、考え方をどのようにすり合わせたのか」「経営者と社員全員がベクトルを合わせるには?」などの質問があり、それに対して、髙橋さんは、「私たちは“背中合わせ型”の夫婦。社会を360度見渡しながら、お互いに支える」「愛は発信するだけではだめ。伝わっているか確認し合うことが大事」と答えるなど、熱いキーワードが飛び交いました。
「女性が笑っている家庭は、夫婦円満。女性が笑っている企業は、ますます必要とされる商品・サービスを扱っている」と、「100年後も変わらない女性の笑顔の価値」を語ってくださった髙橋さん。女性を笑顔にするビジネスは、社会全体、世界を着実に変えていく力があることを力強く示してくださったセミナーでした。
家事代行サービスのパイオニアであり、リーディングカンパニー株式会社ベアーズの取締役副社長。
社内では主にブランディング、マーケティング、新サービス開発、人財育成担当。
同社は2012年テレビ東京「カンブリア宮殿」に出演。2017年には日本初となる「家事支援サービス認証」(日本規格協会)を取得した。 個人としても、日本能率協会「経営・マーケティング戦略コース」をはじめとする、各種ビジネススクールのコメンテーターを務める。
家事研究家、日本の暮らし方研究家としても、テレビ・雑誌などで幅広働く活躍中。
2015年 に世界初の家事大学設立、学長として新たな挑戦を開始。
2016年のTBSドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」でも家事監修を担当した。
1男1女の母でもある。
大学卒業後に通訳や翻訳を提供するコンサルティング会社ユニカルインターナショナルを、2000年に「ダイバーシティ視点でイノベーションを起こす」をミッションにイー・ウーマンを起業。日本初のダイバーシティを数値化する「ダイバーシティインデックス」を発案するなど、ダイバーシティをテーマに国内外で数多くの講演をしている。内閣府規制改革会議を始め、経済産業省、総務省、厚生労働省、法務省、文部科学省など政府各省の審議会等で委員をつとめている。2018年には世界銀行主催の女性起業家を応援する組織We-Fiの日本代表チャンピオンに任命、さらに世界の2000名の女性経営者が所属する世界女性経営者組織(WPO)の日本支部代表に就任するなど、女性起業家・経営者をリーディングしている。