2022.01.11
「美容と健康に自己投資したい消費者」と「サービスする側の中小規模事業者」、双方を金融面からサポートし、継続的に成長を遂げてきたCBSフィナンシャルサービス株式会社。代表取締役社長を務めている山田美穂さんに、さまざまな決断をしてきたこれまでの経緯、会社を成長させるために心掛けてきたこと、今後のビジョンなどを語っていただきました。
三菱商事、メリルリンチ日本証券を経て、2007年に投資会社の立ち上げに参画しました。信販会社であるCBSフィナンシャルサービスと最初に関わったのは、2012年です。破綻の危機に陥っていたこの会社を立て直すためにM&Aを行い、担当者の私が社外取締役に就任しました。当時はまだ、そのわずか2年後に自分が社長になるとは、全く思ってもみませんでした。
2013年、CBSフィナンシャルサービスにご融資してくださる金融機関に奇跡的に出会えたことで、なんとか資金繰りの目途が立ってきました。そこでさらに再建のスピードを上げるために役員構成を変え、当時の社長には会長となっていただいて、新たな社長を迎えようということになったのです。ところが、会社はまだまだ苦しい状態。社長を引き受けてくださる方は、すぐには見つかりそうもありません。私にお声がかかったのは、そんなときでした。
本当に突然のことで、びっくりしました。でも、誰かがやらなければいけないということはわかっていました。自分では思いもしなかったけれど、私ならできると思ってくださっている方がいる。それならば、せっかくなのでお応えし、とにかく一生懸命やろう!と、気持ちを切り替えました。
社長就任ということでご挨拶に向かった関係先のなかには、非常に厳しいご意見をいただいたところもありました。まだ40代で、女性で、経営の経験がない。大丈夫なのかと、面と向かって言われたこともあります。でも、おっしゃることは全てそのとおり。「これからを見ていてください」と答えるしかありませんでした。半泣きになりながら帰ったこともあります(笑)。
当時のCBSフィナンシャルサービスは、9割以上が小さな事業会社向け取引。そのなかに、エステなど美容関係の事業者様と個人のお客様をサポートする事業がありました。ニーズは高いけれど、この分野を手掛ける信販会社は少ないとのことだったので、CBSフィナンシャルサービスの柱として成長させていこうと考えました。
しかし、実際に入社してみると驚くことばかり。やはり、社外取締役でいたときと、見えるものが全く違うんですね。顧客管理のシステム化も進んでいないし、人事制度もない。3か月間は加盟店様の情報ファイルにひたすら目を通し、取引先に片っ端から会いに行き、お金の流れや情報の流れを一からつかみました。金融業界の古い慣習もいろいろとありましたが、時にはそれを乗り越えたりもしました。
最初の3年は「再生期」なので、やるべきことははっきりしています。まずは会社を立て直すということです。とても大変でしたが、他社で働いた経験値が活きたと思っています。挨拶に行ったときに厳しいことをおっしゃった方には毎月会いに行き、成績を見せました。とにかくご安心いただくということを繰り返して、信頼を築き、今ではとてもいい関係になっています。
そして、次の3年は「成長期」だったのですが、途中でとても悩み始めてしまいました。エステだけでなく、クリニックやスクールなどの事業分野にも進出し、チャレンジしてうまくいっていることもありましたが、自分の下すジャッジに迷いが出ることも……。自分の引き出しだけで、これからも大丈夫だろうかという怖さが出てきました。
私の成長が止まったら、会社の成長も止まってしまう。経営者として、きちんと体系的に学びたい。そう考えたのは、2017年のことです。社長となって4年目、実践はしてきたけれど、足りないものがあればインプットしたいと思うようになりました。いろいろと調べ、仕事をしながら通える慶應義塾大学大学院修士課程のエグゼクティブMBAプログラムを受験し、合格することができました。
大学院で学べたことはもちろん大きかったのですが、一番プラスになったことは人との出会いです。授業はディベートが多く、海外企業も含めたいろいろなケーススタディをもとに、みんなで話し合っていきます。そこで他の人の意見を聞いて、「えーっ! そんなふうに考えるんだ!」とびっくりしたことが何度もありました。自分はどれだけ人付き合いが偏っていたんだろう、世の中の一面しか見ていなかったんだなと実感しました。
金融業界の仕事ですから、どうしても同じ業界の人と話をすることが多くなります。共通の言葉で会話できる人といるほうが、居心地がいいんですよね。でも、大学院へ行っていろいろな業種・職種の方と出会い、プライベートでの人付き合いも拡がりました。どんな方と会っても、面白いと思って話を聞くと、皆さんいろいろ教えてくださるんですね。大学院で教授や同級生、先輩たちと会えたことは、一生の財産だと思っています。
社長を引き受けたときも、大学院へ行ったときもそうでしたが、私は「まず、やる」ということを大切にしています。決めてから、帳尻合わせをします。考える時間と手間は、決めた後のことを良くするために、一生懸命使うということです。
30代に入ってから、いわゆるママさんバレーを始めたのですが、いざチームに入ってみると、自分がとんでもなく下手なことがわかりました。そこで練習量を増やすために他のチームにも参加し、気付いたら3つのチームを掛け持ちしていました(笑)。
この話をすると、みんなに笑われます。「自分が下手だと気付いたら、普通は迷惑かけるからやめようと思うよ」と。社長をやってみないかと言われたときも同じで、普通は「私はこんなことできません、迷惑かけますから」ってやめるらしいんですけど、私はそのことに全く気付かなかったんです。とにかく、やる。時間をかけるのは、そこからでいいと思っていました。
大学院に行ってから、その考えがさらに進化しました。決めようとする段階でどんなに悩んでも、その答えは誰も知らない。正に神のみぞ知る、ということなんですね。自分の状況も、社会的なことも、明日になって急に変わることはあり得る。だから、決めるときに悩み過ぎるのは全くの無駄なんだと、そんな境地に至りました。
コロナ禍でテレワークが進みましたが、私たちは個人情報を扱う仕事なので絶対にできないと思っていました。けれど、社員の安心安全はどうしても守りたい。そこで、2020年3月に「テレワークをやります」と宣言し、どうしたらできるかをみんなで考え、いろいろと工夫し、4月にテレワーク実装まで一気に進めました。すごい勢いでしたね。
社員には、とにかくワクワクしていてほしい。いつもそう思っています。「ワクワクしてる?」って、そればっかり聞いています(笑)。社員にも気持ちが伝わっていて、自分たちで何かやりたいということで、採用担当発信のInstagramを始めました。記事や写真をいろいろと工夫してくれて、ありがたいですね。
社員たちは、金融関係の仕事をしたことのない人が圧倒的に多いです。正社員としての就労経験がない人も少なくありません。でも、「大事なことは、ウチに入ってから」と、私は思っています。日本は、過去実績に囚われている文化があるんですね。金融機関からお金を借りるのも、3期分の決算書で、しかも黒字でないとダメだとか。新しい事業を始める方に、そんなものがあるわけがないんです。
私個人は何の実績もないのに社長に推してくださった方がいて、実績のない会社を信じて救ってくださった金融機関があります。だから、恩返しじゃなくて、「恩送り」をしていきたい。いろいろな方を応援していきたいと思います。特に、自己投資をしたい、新しいサービスを提供したい、という女性たちをサポートする会社でありたい。私自身も、会社も、それを体現しています。自分たちもしっかり成長して、利益を上げながら、社会に還元をしていきたいと思っています。
大阪府出身。大学卒業後、三菱商事、メリルリンチ日本証券(現:BofA証券)で、事務職から営業職、マネジメントとその時々の縁に導かれてキャリアチェンジ。
2014年1月よりCBSフィナンシャルサービス株式会社代表取締役社長。破綻の危機に陥っていた同社を、美容医療・健康分野に特化した信販会社に転換させ再生を図る。
2020年3月慶應義塾大学大学院経営管理研究科修了、経営学修士。
CBSフィナンシャルサービスは、その顧客・サービス提供事業者・同社従業員ともに女性が大多数を占めており、「女性による女性のための金融サービス」として、「美容と健康に自己投資したい消費者」と「サービスする側の中小規模事業者」双方を金融面からサポートしている。