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セミナー

TOKYO女性経営者塾 by N E W
第1回 「起業家マインドセット​ 」― あなたの「一歩目」を支える力とは
~想いだけじゃ踏み出せない?資金調達という現実と向き合う~​​

日時 2025年11月5日(水)14:00〜16:00
講師 株式会社A&I 代表取締役
岡 美智子
進行 一般社団法人WE association 理事
株式会社A&CO 代表取締役社長
三竹 麻子

資金調達と向き合わないとはじまらない

「TOKYO女性経営者塾 by N E W」テーマ型セミナー、2025年度1回目のテーマは「『起業家マインドセット』― あなたの『一歩目』を支える力とは~想いだけじゃ踏み出せない?資金調達という現実と向き合う~」です。エンジェル投資家倶楽部の運営や起業家の資金調達・営業・販路開拓支援など、現場に近いところで伴走してきた株式会社A&I代表取締役 岡 美智子さんに資金調達とどう向き合い、どう実践していくのかをわかりやすい例を交えながらお話しいただきました。

セミナーの様子

「一歩目」を支えるのは、スキルより“考え方”

セミナーの冒頭、岡さんが最初に投げかけたテーマは「マインドセットって何でしょう?」という問いでした。

「マインドセットって、“気合い”とか“根性”のことじゃないんですよね。どちらかというと『ものの見方のクセ』。このクセが、起業の一歩目を支えてくれるか、止めてしまうかを分けてしまうんです」
メンタル(そのときどきの気分)ではなく、「どんな前提で世界を見ているか」という“考え方の枠組み”こそがマインドセットだと岡さんはいいます。
ここで紹介されたのが、いわゆる「氷山モデル」です。
表面に見えている意識はほんの一部で、その下には、育ってきた環境や受けてきた教育、経験から形づくられた無意識の価値観が大きく横たわっています。
「起業とかお金のことが、なんとなく怖いなあ…っていう感覚も、多くはこの“水面下の部分”から来ているんです。
だからこそ、『自分はどんな前提で世界を見ているのか』に一度気づいてみましょう、というのが今日のスタート地点です」
日本社会の文化的な特徴にも話は広がります。
ホフステードの文化モデルによると、日本は「男性性(競争・成果・効率を重視する価値観)」が世界でも非常に高い国だとされています。

「つまり、日本のビジネスの場って、自然と“男性的なゲームのルール”が強くなりやすいんですね。
一方で、共感とか生活の質とか、人との関係性を大事にする“女性性”の価値観も、今のビジネスではすごく重要になってきています。
今日は、その両方をちゃんと理解したうえで、自分の強みをどう活かすか、というお話をしていきたいと思います」

スキルやノウハウの前に、“どんな前提で世界を見ているか”を見直す。
それが、このセミナー全体を貫く「起業家マインドセット」の出発点として提示されました。

セミナーの様子

「怖い」の正体を見極める ― 女性起業家がぶつかる3つの壁

続いて話題は、「なぜ起業や資金調達はこんなにも怖く感じられるのか?」というテーマに移ります。
中小企業白書などのデータを見ると、起業に関心がある人たちが挙げる不安の上位には、必ずと言っていいほど「事業に投じた資金を失う」「借金や個人保証を抱える」「安定収入を失う」「家族に迷惑をかける」といった項目が並びます。

「みなさんも“あるある”じゃないですか?
実は、失敗そのものよりも“お金の失敗”を一番怖がっている、というのがデータからも見えてくるんです」
では、その「怖さ」の正体は何なのでしょうか。

「多くの場合、“知らないから怖い”なんです。
初めて海外に行く前って、なんとなく不安ですよね。でも、一度行ってしまうと、『あ、案外大丈夫だった』となる。
資金調達も同じで、仕組みも、どこに聞けばいいのかも分からないから、余計に怖くなっているケースがすごく多いです」

ここから岡さんは、日本社会の文化的な背景を踏まえながら、女性起業家がぶつかりやすい「3つの壁」を紹介しました。
1つ目は、「営業が苦手」という壁です。
「やりたいことや、社会課題への想いが強い方ほど、『売り込みなんてしたくない』って思いやすいんですよね。
でも、「“営業しないと買ってもらえない”ので“売り込み”が必要になるのです」そもそも「求められているものを提供していますか?」の方が重要です。

2つ目は、「自分を安く見積もってしまう」壁。
「『こんな値段じゃ誰も買ってくれないんじゃないか』『値上げしたら嫌われるんじゃないか』って、自分で自分の単価を下げてしまう。
その結果、頑張っているのに生活が回らない…ということも起こりがちです」

3つ目は、「お金回りが苦手」という壁です。
「『私、数字アレルギーで…』『経理とか絶対無理です』っておっしゃる方、本当に多いんです。
でも、家計簿つけて毎月なんとなくやりくりできている時点で、実はもう家計という“簡易PL”は作れているんですよ」

ここで岡さんは、「これらは能力の問題ではない」と強調します。
「日本って、『貯金は良いこと』『借金は悪いこと』って教えられて育つんですよね。
だから投資とか融資とか、“お金を増やすためにお金を使う”という発想に触れる機会がほとんどない。
その結果、“お金の話=怖いもの”っていう前提が、無意識に刷り込まれていることが多いんです」

怖さをゼロにするのではなく、「自分は何を怖がっているのか」「その背景にどんな前提があるのか」に気づくこと。
それが、「起業家マインドセット」の第一歩だと語られました。

セミナーの様子

営業が苦手でも大丈夫? 共感力を活かした“売れる仕組み”

講義の後は岡さんに進行の三竹さんが加わったトークショー。ここで岡さんがまず投げかけたのは、「そもそも事業とは何か?」という問いでした。
「事業って、きれいごと抜きに言うと“お金を生み出す仕組み”なんです。
営利を目的とした活動だからこそ、ちゃんと儲からないと続けられない。
社会貢献とか自己実現はもちろん大事なんですけど、それは“儲かる仕組み”の上に乗ってくるもの、という順番を一度確認したいんですね」

投資家が起業家に真っ先に聞くのは、「で、それ儲かるの?」というシンプルな一言だといいます。
「『日本を元気にしたい』『誰かの役に立ちたい』って、すごく素敵な想いなんですけど、それだけだと家賃も払えないし、スタッフのお給料も払えない。
だから、“営業が得意かどうか”の前に、『そのサービスは、本当にお金を払ってくれるお客さまがいるのか?』を考えることが、マインドセットとしてすごく大事なんです」

さらに、岡さんは「営業は、自分ひとりでやらなくてよい」と続けます。
「営業が得意な人を仲間にする、キーパーソンにだけトップセールスする、ITツールで自動的に問い合わせが来るようにする…。
“私が頑張って営業しなきゃ”と考えるとしんどいんですけど、“売れる仕組みを作る”と考えると、選択肢が広がりますよね」

マーケティング表現の違いを示すエピソードも、会場の笑いを誘いました。
ある補聴器代理店が、機能やスペックを細かく並べたチラシを配っても反応が薄かったところ、「おばあちゃん、聞こえる?」という一行コピーに変えた途端、問い合わせが増えたという話です。
「スペックをびっしり書く、“いかにも機能面重視”なチラシから、ストーリーや感情に訴える表現に変えただけなんですね。こういう、“共感を呼ぶ売り方”って、実は共感力が強みなのではと思います」
「営業が苦手だから起業に向いていない」のではなく、「自分の強みを活かせる売り方や仕組みをまだ見つけていない」だけ。
「共感力とか、物語を大事にする感性は、現在主流のマーケティングでは本当に武器になります。
それを強みだと捉えて、『どうやったら活かせるかな?』と考えてみてほしいなと思います」
岡さんの言葉に、参加者も大きくうなずいていました。

セミナーの様子

お金の話から逃げない ― 借入・投資・資金調達のマインドセット

「お金の使い方」について岡さんは「皿洗いの3パターン」から話をはじめました。

「たとえば、毎日のお皿洗いを100円で請け負うとします。1年間、365日続けたら3万6,500円貯まりますよね、これがAパターン。
でも、100日だけ頑張って1万円貯めて、その1万円で食洗機を買う。残りの日数は、食洗機に任せて自分は隣の家の皿洗いに行く。これが5万3,000円のBパターン。
さらに、最初から親に1万円借りて食洗機を買っちゃう。1年間200円で皿洗いして借金を利息100円付けて返済すると、最後に手元に残るのは6万2,900円。これがCパターンです」
Aは「自己資金だけ」、Bは「自己資金+投資」、Cは「借入+投資」です。

「どれが正解という話ではないんですけど、『時間をお金で買う』のか、『お金のために時間を差し出す』のか、という違いなんですね。
起業でもまったく同じで、“お金を使うこと自体が悪い”のではなく、『何に投じるか』『どのタイミングで投じるか』を設計するのが経営者の役割です」

とはいえ、日本では「借金は悪」「貯金は正義」という価値観が根強く、借入に対して強い抵抗感を持つ人も少なくありません。
「でも、経営の現場で一番怖いのは“キャッシュが尽きること”なんです。
黒字倒産って言葉、聞いたことありませんか?。売上はあるのに、現金がないから倒産してしまう」

コロナ禍では、銀行との付き合いがなく融資を受けてこなかった飲食店が、急激な売上減で廃業に追い込まれる一方、赤字でも融資の実績があった飲食店は持ちこたえられた、というケースも多くあったといいます。
「私は、融資の利息は“倒産しないための保険料”とか“安心料”と考えてもいいと思っています。
借金=悪ではなくて、『どのくらい借りて、何に使うか』の設計の問題なんですよね」

三竹さんもご自身のリアルな経験を共有してくれました。
「私も、信用金庫さんとは“べったり”なんです(笑)。
1番最初に1,500万円ぐらいドンと借りました。
一度関係ができると、“信頼貯金”がたまっていく感覚があって、次に何かあったときにも『また一緒にやりましょう』と言ってもらえるんですよね」

ここから、岡さんは資金調達の選択肢を俯瞰します。
銀行・信用金庫・日本政策金融公庫などの融資、ベンチャーキャピタル(VC)やCVC、エンジェル投資家、サーチファンドからの出資、購入型・寄付型・融資型・出資型などのクラウドファンディング、売上連動で返済するレベニュー・ベースト・ファイナンス(RBF)など、「借入」だけに限られない手段があることが紹介されました。

「大事なのは、“どの手段が流行っているか”ではなくて、“自分はどこをゴールにしたいのか”です。
IPOを目指していくスタートアップもあれば、年商1,000万円・毎月30万円の手取りで十分幸せ、というスモールビジネスもある。
そのゴールによって、使うべき資金調達の種類や金額は全然違ってきます」

セミナーの様子

「一歩目」をひとりにしない ― 支援制度と伴走者を味方につける

岡さんからは、「東京都創業NET」や「TOKYO創業ステーション(丸の内・TAMA)」など、公的支援の基本情報が紹介されました。

「東京都は本当に起業支援が充実しています。
創業セミナーや資金調達の講座、SNS集客の講座、無料相談に、託児付きのスペースまである。
『一歩目を一緒に考えてくれる場所』として、遠慮なく使ってほしいですね」

区の創業支援メニューや、登録免許税の軽減・金利優遇といった優遇措置も、「登記する場所=どんな後押しが受けられるかを決める要素」として紹介されました。

三竹さんからはリアルな経験談として創業ステーションの紹介がありました。
「東京都の丸の内の創業ステーション、私、あそこほぼ“顔”なんです(笑)。
アクセラレータープログラムや補助金の仕組みもいろいろあって、正直、書類はめちゃくちゃめんどくさいんですけど……。
東京都が本気で力を入れているので、オフィスにもわざわざヒアリングに来てくれたりもします。
そこでの実績があると、その後に新しい補助金や融資の話が来たり、“良いループ”が回り出す感覚がありますね」

補助金・助成金は書類が細かく大変ですが、それをやりきること自体が「信頼の積み上げ」になり、次の資金調達や事業機会につながっていく――という、現場ならではの視点が共有されました。
岡さんも、「補助金や融資は、『全部自分で完璧にやらないと』と思うとつらいんですが、“書類が得意な人たちの仕事”でもあるので、そこは遠慮なく頼っていいと思います。
『支援をお願いするのは図々しい』という思い込みを、ぜひ手放してほしいですね」と呼びかけます。

最後は、岡さんのこんなメッセージで締めくくられました。
「想いだけだと、一歩目ってやっぱり怖いんです。
でも、考え方を少しアップデートして、お金の仕組みを知って、使える支援や人とのつながりを“図々しいくらい賢く”使っていけば、怖さはちゃんと減っていきます。
今日の時間が、みなさんの“一歩目”を少しでも軽くできていたらうれしいです」

岡 美智子の写真
岡 美智子
株式会社A&I 代表取締役

石川県出身。立命館大学卒業。
在学中に UBC(ブリティッシュコロンビア大学、カナダ)に留学。 卒業後は、スターバックスコーヒージャパンに入社、新店舗立ち上げ、人材育成等を経験後、P&G、アストラゼネカ、医療機器メーカー、薬事コンサルと外資系企業で経営企画、マーケティングに携わる。
スターバックスコーヒージャパンでストックオプションを得たことがきっかけで始めた株取引の趣味が高じて、独立後に株スクールの講師を務めたのち、2020年2月株式会社A&Iを創業。
「エンジェル投資家の存在が当たり前の社会に」を掲げ、起業家やベンチャーの志を投資家に繋ぐコミュニティを運営。
iU(情報経営イノベーション専門職大学)客員教授

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