セミナー
日時 | 2023年2月24日(金)10:00〜12:00 |
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講師 | 株式会社iSGSインベストメントワークス 取締役 代表パートナー 佐藤 真希子 株式会社日本政策金融公庫 国民生活事業本部東京創業支援センター 所長 藤見 佳奈枝 |
進行 | 株式会社イー・ウーマン 代表取締役社長 株式会社ユニカルインターナショナル 代表取締役社長 佐々木 かをり |
2022年度最後のTOKYO女性経営者塾は、「資金調達」がテーマです。講師は、iSGSインベストメントワークス取締役代表パートナーの佐藤真希子さんと日本政策金融公庫の国民生活事業本部東京創業支援センター所長である藤見佳奈枝さん。出資と融資、それぞれの立場から、スケールアップを目指す人に向けた重要ポイントについてお話しいただきました。
はじめに登壇するのは、佐藤真希子さんです。2016年、独立系のVC(ベンチャーキャピタル)であるiSGSインベストメントワークスを国内初の女性代表パートナーとして立ち上げ、現在は90社に投資しています。
「昨今投資させていただいている女性の方は、大きなマーケットを狙っている素晴らしい起業家ばかりです」と、女性たちが活躍する現状を笑顔で語り、セミナーがスタートしました。
そもそも、「資金調達」とは何なのか。その一覧が示されます。自分の貯金、親からの支援、補助金・助成金などの活用、融資、出資、クラウドファンディング。さらに、「出資と融資の違い」についても語られます。
「融資は、信用を基にお金を貸すということです。実績がないとやはり小額になりますし、検討時間も長くなります。VCなどからの出資は返済の義務もなく、その代わりにビジネスを急拡大させるなどのコミットをする必要があります」
それでは、VCは起業家たちの何をチェックして出資を決めるのでしょうか。佐藤さんがポイントを挙げて説明します。
「1つは、ビジョン。その起業家がどんな夢を持って、どんな課題を解決したいのか、というところをすごく見ています。2つ目は、プロダクト・サービス。自分の事業についてひとことで的確に言えるか。3つ目は、戦略。事業の強みをどう仕組化していくのか。4つ目は、ターゲット。誰のためか、競合状況はどうなっているのか。5つ目は、チーム。ベンチャー企業は資金がないので、最少人数で、最強のチームになっているのかを見ます」
それぞれのポイントを具体的に解説した後は、「資金調達するときの罠」について説明いただきました。創業時に出資をしてくれたエンジェル投資家が、結果的にほとんどの会社の株式を保有する資本構成になってしまったという例や、創業メンバーがそれぞれ同じ分だけお金を出し合った場合に、責任の所在があいまいになる例、上場審査時には株主の家族にまで反社会勢力のチェックが入るため、上場が困難になってしまった例など、様々なケーススタディが挙げられました。
「事業を通じて、皆さんがどういう世界を実現したいのか。目指したいのか。それに応じた資金調達の方法があると思います。VCから出資を受けるということは、冒頭に申し上げたとおりに急成長することだけでなく、自分だけの会社ではなくなるわけなので、まずご自身の覚悟も必要です。その上で、誰からどう資金を調達するのが自分の事業にとってベストなのかを考える必要があるかと思います」
そう締めくくられ、佐藤さんの熱のこもったセミナーが終了しました。
続いて、藤見佳奈枝さんが登壇します。はじめに、日本政策金融公庫の概要が語られました。
「日本政策金融公庫では、国民生活事業、中小企業事業、農林水産事業という3つの事業がシナジーを発揮しながら業務を進めています。そのなかで、創業支援を行っているのが、私が所属している国民生活事業です」
その融資先は119万先にのぼり、女性起業家への融資実績は、毎年6,000先ほどで推移しているといいます。
次に「審査担当者の目線」と題し、創業計画書のチェックポイントが示されました。
「佐藤さんもお話しされたように、まず、経営者としての能力が備わっているか、その方に事業をやり切る熱量があるかを確認していきます。加えて、ビジネスプランです。整合性、妥当性といった客観的根拠のあるものをベースとして作成されているかをチェックします。この2点は非常に重要です」
さらに、ビジネスをするうえで大切な「やりたいこと」「できること」「必要とされること」という3つの視点を必ず確認するといいます。
「困難を乗り越える熱意があるか、必要なスキルがあるか、ビジネスが成立するニーズがあるか。この3つは絶対に重視しながら、ビジネスプランを見ていくことになります」
次は、創業計画書のつくり方です。
「最初に全体の構想、事業イメージを固めます。2番目に、それを実際にやっていくためにはどんな商品、サービスにすればよいのか、事業内容を整理します。3番目に、それを実行するための資金計画、調達方法を決めます。最後は収支計画・返済計画をつくります」
さらに、日本政策金融公庫の創業計画書を例にとりながら、この4つのステップについて細かく解説されました。
「1回では完全につくれないので、この4つのステップを繰り返していきます。私は創業セミナーなどで、よく『必ず矛盾が出てくるので、少なくとも5回転してください』と言っています」
このようにしっかりと完成させた創業計画書の重要性として、「創業時に計画書を作成したほうが業績が増加傾向となる」というデータも示されます。
最後に紹介されたのは、主な融資制度と支援施策です。女性起業家の方を特別利率で支援する「新規開業資金(女性、若者/シニア起業家支援関連)」、他の融資制度と組み合わせて無担保・無保証人で利用できる「新創業融資制度」などを説明したうえで、「制度の前に、いつ、どのくらい、何のために必要なのかということをしっかりと言えることが重要です」と、女性起業家へのアドバイスとともに締めくくられました。
ここからは佐々木かをりさんの進行で、佐藤さん、藤見さんとともにカジュアルなトークショーを展開していきます。1987年に通訳・翻訳会社のユニカルインターナショナル、2000年に「ダイバーシティ視点でイノベーションを起こす」をミッションとしたイー・ウーマンを創業した代表取締役の佐々木さんは、「私が起業したときにこんな講座があったら、どれだけよかっただろうと思って聞いておりました」と笑顔で2人に語り掛けます。
佐々木さんから、まず藤見さんに「日本政策金融公庫の方は、創業計画書作成の際に指導してくれたりするのですか?」と質問すると、「専任のスタッフがいる東京ビジネスサポートプラザというところがあります」という答えとともに、予約申込みの二次元コードも表示されました。さらに佐藤さんへ「VCの判断で出資を断られたときに、後日のリベンジはあるのですか?」と尋ねると、「もちろん、あります。2年前に会った人から再び連絡がきて検討するなどのケースは多々ありますね」という答えが返ってきました。
最後に、藤見さんから、公庫の取組みの中から有益な情報として2つ、『継ぐスタ』と『日本公庫ダイレクト』のご紹介がありました。
「日本政策金融公庫では、事業承継マッチング支援にも力を入れており、『継ぐスタ』は、事業を受け継いでスタートする新しい創業のカタチです。既存事業のアセットを受け継ぐことができるため、創業を円滑に進められる可能性があります」と、実際に『継ぐスタ』で事業を始めた女性起業家の事例を示しながら説明していただきました。
また、『日本公庫ダイレクト』について、「経営に役立つ情報や様々な分野のセミナー情報などが掲載されており、登録も無料です。是非ご活用ください」とご紹介いただきました。
参加者からも、次々に質問が上がります。「日本政策金融公庫では資本政策の相談もできるのですか?」「VCからの人財面のサポートはどのようなものがありますか?」「合同会社の場合も出資が可能ですか?」など、様々な問いかけに答えながら、さらに詳しい解説がなされていきました。
あっという間に終了時刻となり、佐々木さんから参加者にエールが送られます。
「今日も盛りだくさんでとても面白く、情報も豊かだったと思います。参加いただいている方々が横につながるというのもビジネスが広がるチャンスですので、ぜひネットワーキングを楽しんでください」
その言葉に背中を押され、最後に参加者同士でオンラインネットワーキング。充実した学びとつながりの時間となりました。
2000年 株式会社サイバーエージェント入社。
インターネット広告事業の営業・マネージメント、子会社の新規事業立上げを経て、2006年より株式会社サイバーエージェント・キャピタルへ出向。
国内のシード期のスタートアップベンチャー投資に9年間従事。
2016年6月に独立系のベンチャーキャピタルである株式会社iSGSインベストメントワークスを国内初の女性代表パートナーとして立ち上げ、90社に投資をしている。
IPO実績はインパクトホールディングスやビザスク、エクサウィザーズなど。
トーヨーカネツ株式会社社外取締役、経済産業省J-Startup推薦委員、東京都データ活用推進委員。
入庫以来、大手町支店(現東京支店)、名古屋中支店、本店創業支援部にて数多くの創業融資に携わる。その後、堺支店の融資課長を務め、地域の民間金融機関や支援機関と連携した協調融資等に取り組む。また、女性の視点から経営支援の現場を活性化させることを目的とした「女性経営支援者ネットワーク」の構築にも尽力。
2021年3月、東京創業支援センター所長に就任。創業者向けのセミナーの企画・開催、女性起業家やベンチャー企業への資金調達支援等を担当している。
ダイバーシティの第一人者。1996年から日本最大級のダイバーシティ会議「国際女性ビジネス会議」を企画・プロデュース、2000年から「イー・ウーマン」サイトを中心にダイバーシティ関連のコンサルティング及び研修・講演。組織の多様性と成長性を分析する「ダイバーシティインデックス」を開発。また、内閣府男女共同参画会議、厚生労働省をはじめ多くの政府審議会等の委員を務める。世界銀行「女性起業家資金イニシアティブ(We-Fi)」日本代表。日本代表としてAPEC、OECD等国内外での講演も通算1,700回以上。これまで東京大学、上智大学など複数の大学、高校等で教鞭を執る。また、「アクションプランナー」と佐々木メソッドによる時間管理術は日本の時間管理・手帳ブームをつくり毎月の講座も「人生が楽しくなる」と人気。テレビ朝日「ニュースステーション」レポーター、TBS「CBSドキュメント」アンカーなど歴任。現在もテレビ、雑誌、新聞等のコメンテーターを務める。2009年ベストマザー賞受賞。2021年「ブルガリ アウローラ アワード2020」受賞。神奈川県横浜市生まれ。上智大学外国語学部比較文化学科卒業。米国ニューヨーク州エルマイラ大学に留学。2008年名誉文学博士号授与。2児の母。