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セミナー

TOKYO女性経営者塾 by N E W
第2回 サステナビリティ経営
~We Care More.人と社会の可能性を拓く~

日時 2022年8月18日(木)10:00~12:00
講師 株式会社ポーラ 代表取締役社長
及川 美紀
進行 株式会社イー・ウーマン 代表取締役社長
株式会社ユニカルインターナショナル 代表取締役社長
佐々木 かをり

一人ひとりのWillが原点。
想いをつなげ、社会を変えるサステナビリティ経営とは

女性経営者の成長をサポートする「TOKYO女性経営者塾 by N E W」。今回は、(株)ポーラの代表取締役社長である及川美紀さんを講師に迎えました。創業90年を超える老舗企業の社長として、今考える「サステナブルな経営」とは?「人」を中心に変革を重ねてきたポーラの道のりと今後のビジョンについて、お話を伺います。

化粧品を通じて、人と社会の永続的幸福を実現する

2022年9月に創業93年を迎えるポーラは、日本を代表する化粧品メーカーであると同時に、多くの女性たちの活躍を後押ししてきた企業でもあります。現在は約1,400人の従業員のほか、約33,000人の個人事業主がビジネスパートナーとして活躍し、エステサロンやショップを展開。「この方々とは、従業員に勝るとも劣らない形で絆をつくっています」と、及川さんは語ります。

「私たちは、自らを化粧品会社とは定義していないんです」という及川さん。「化粧品によってその人が自信を持ったり、可能性を広げたり、人とつながることができる。それをお手伝いしているという意識で、事業を展開しています」と、力強く語ります。
「その中心は、必ず『人』であると我々は思っています。一人の想いが周りの人を動かして、どんどん新しいことが実現していく。そのための拠り所になるのが、企業理念です」

そして、ポーラの企業理念である「Science. Art. Love.─ 私たちは、美と健康を願う人々および社会の永続的幸福を実現します」が示されました。
「Scienceは好奇心、探求心。Artは芸術文化だけでなく手仕事。Loveは人との関わりの必ず必要なもの。この独自価値を盛り込んだ企業理念を実現するということを社会に約束し、当社はそこをPurposeにしているということになります」

「女やったら、あきませんか」から始まったダイバーシティ

続いて、企業理念を実現する道筋として、創業100年を迎える2029年のビジョン「私と社会の可能性を信じられる、つながりであふれる社会へ」が紹介されました。
その行動スローガンは、「We Care More. 世界を変える、心づかいを。」です。
ケアする心づかいを目の前の人、そして社会、地球へと広げていこうというもので、そこには妻の手荒れを治すために独学でクリームをつくった創業者の想いが継承されています。

世界を変える原点となる一人の想い。「その可能性を拓くために、ダイバーシティを実現する」と及川さんは語ります。現在、ポーラの従業員は女性75%、男性25%。総合職は男女比がほぼ同じ、管理職の女性比率は約30%です。日本が目指している女性管理職比率30%は達成されていますが、及川さんは「当社にもまだ課題がある」といいます。
「総合職の男女比が同じなのであれば、管理職比率も同じになって然るべき。20%の女性が、何らかの理由で機会をもらえないでいる。これは男性にとっても成長が阻まれるということです」

ここで、1937年に撮影された、京都にあるショップの写真が紹介されました。男性がセールスを担っていた時代に「女やったら、あきませんか」と、20代の女性が扉を開けた。そこから男女ともに成長する歴史が始まったと言います。
「一歩踏み出す人、サポートする人がポーラを変えました。ビジョン実現のためのダイバーシティ&インクルージョンというのは、一人ひとりの能力の最大化はもちろんなんですが、自分と周囲の意志というものがすごく大事になってくると思います」

個の力が引き出され、“Will”がつながり、風土が変わる

ダイバーシティ実現において、「関係の質」からスタートすることが重要という及川さん。関係が思考を変え、行動、結果に結びつくといいます。また、個の力を引き出す仕掛けとして、社員が1~3年以内に自分と組織にどんな変革を実現するのかを考えること、組織の変革取組を表彰することなどが紹介されました。
「こんな感じでいろいろとやっていますと、自分たちの“Will”がつながり、自発的にワーキンググループができてきます。今は多く社員が参画し、数多くのグループが活動しています」

企業風土が変化していったことは、雑誌『FRaU』の「JAXURY AWARD 2022」を受賞するなど、社会での評価にも結び付いています。
「社内の取組は商品やサービスで必ず社会に還元していかなければならないと思っているので、それを評価していただいたのは大変うれしいことです」

これからの社会に向けて、及川さんは昨年、「ポーラ幸せ研究所」を設立しました。
「企業理念で『永続的幸福を実現する』と言っているので、幸福とは何かというところを考え、社会に還元しようということでつくりました。社員とその家族、ビジネスパートナーとその家族、お客さま、ステークホルダーにおける美しく幸せな生き方、Well-being実現に向けた仕組みづくりや社内外への啓発を進めています」

サステナビリティとは、現状維持ではなく変革し続けること

後半は、(株)イー・ウーマン代表取締役社長の佐々木かをりさんが進行を務めるトークショーです。佐々木さんは及川さんが語った「Willを育てる」というキーワードに触れ、
「イー・ウーマンはダイバーシティ経営の推進をミッションにしていますが、その目的は力をあわせてより良い成果を生み出すということです。そこに行きつくWillを育てるということは、その人の中にWantを育てなければいけないのでは」と問いかけます。

「そうなんです」とうなずく及川さん。「つくりたい社会がないと、Willが育ちません。それを自分の中から発見するためには、企業の風土が大切」と、相互理解を深める研修などの取組を語ります。その後は、ポーラの業績が厳しかった時代からのV字回復など、貴重な話題がシェアされていきました。参加者も加わってのディスカッションでは「取組の成果を実感するための仕組みは?」「女性活躍に同意しない男性へのアクションは?」など次々に質問が投げかけられ、活発にトークが繰り広げられました。

「まだまだ質問が来ているのですが…」と、佐々木さんが名残惜しそうに最後を締めくくります。
「サステナビリティという言葉の意味は『持続可能性』なので、今を維持していくようにイメージされますが、今日のお話からサステナビリティこそ変革し続けるということ、その大元が人であり、Willなのだということがよくわかりました」
その後は、参加者同士のネットワーキングタイム。今日の学びを共有しながら、新たなつながりが生まれる時間となりました。

及川 美紀
株式会社ポーラ 代表取締役社長

宮城県石巻市出身。1991年、ポーラ化粧品本舗(現株式会社ポーラ)入社。
美容スタッフ・ショップの経営をサポートする埼玉エリアマネージャーを経て、2009年より商品企画部長に。2012年に執行役員(商品企画・宣伝担当)、2014年に取締役就任(商品企画・宣伝・美容研究・デザイン研究担当)。2020年1月より株式会社ポーラ代表取締役社長。

佐々木 かをり
株式会社イー・ウーマン 代表取締役社長
株式会社ユニカルインターナショナル
代表取締役社長

ダイバーシティの第一人者。1996年から日本最大級のダイバーシティ会議「国際女性ビジネス会議」を企画・プロデュース、2000年から「イー・ウーマン」サイトを中心にダイバーシティ関連のコンサルティングおよび研修・講演。組織の多様性と成長性を分析する「ダイバーシティインデックス」を開発。また、内閣府男女共同参画会議、厚生労働省をはじめ多くの政府審議会等の委員を務める。世界銀行「女性起業家資金イニシアティブ(We-Fi)」日本代表。日本代表としてAPEC、OECD等国内外での講演も通算1,700回以上。これまで東京大学、上智大学など複数の大学、高校等で教鞭を執る。また、「アクションプランナー」と佐々木メソッドによる時間管理術は日本の時間管理・手帳ブームをつくり毎月の講座も「人生が楽しくなる」と人気。テレビ朝日「ニュースステーション」レポーター、TBS「CBSドキュメント」アンカーなど歴任。現在もテレビ、雑誌、新聞等のコメンテーターを務める。2009年ベストマザー賞受賞。2021年「ブルガリ アウローラ アワード2020」受賞。神奈川県横浜市生まれ。上智大学外国語学部比較文化学科卒業。米国ニューヨーク州エルマイラ大学に留学。2008年名誉文学博士号授与。2児の母。

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