セミナー
日時 | 令和3年10月18日(月)15:00〜17:00 |
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講師 | 株式会社ジャパンタイムズ 代表取締役会長兼社長 末松 弥奈子 |
進行 | 株式会社イー・ウーマン 代表取締役社長 株式会社ユニカルインターナショナル 代表取締役社長 佐々木 かをり |
女性経営者に学びの機会を提供する「TOKYO女性経営者塾 by N E W」。今回は、ジャパンタイムズ代表取締役会長兼社長の末松弥奈子さんを講師に迎えました。インターネット黎明期にいち早くIT企業を立ち上げ、歴史ある英字新聞社の経営者として活躍する今日まで、時代の変化をどのように捉え、どのような道のりをたどってきたのかを伺っていきます。
大学院を卒業し、1993年に起業した末松さん。その理由は「広島の実家に戻りたくなかったから」という意外なものでした。女性は早く結婚を、という保守的な家族から離れるために、末松さんは起業を選択。ホームページ制作会社を設立し、事業は成長していきます。「『サイバービジネス最前線』という日経産業新聞1面の記事に、佐々木かをりさんとともに取り上げられたこともあります」と、勢いに乗った当時を振り返りました。
2001年、企業のニュースリリースのポータルサイトのサービスを提供する会社「News2u.net」を新たに設立。この時点で、最初の会社を事業統合します。「自分の想いだけでやってきて、失敗したという気持ちがあった」と、当時を語る末松さん。新事業を始める前にビジネススクールに入学し、経営について学びました。
「ここで勉強できたことはよかったと思います。何か新しいことをやるときに、今までの経験で何が足りないんだろうということを考えるようになりました」
News2u.netは日本最大規模のサイトとなったものの、急成長は難しく、会社の規模を縮小。この時に父親の支援があったことから、2013年より家業である常石グループのホールディングカンパニーの経営に携わることに。ところが、やはり「弟たちの事業はとても大きいのに、私にはメインストリームはなかなか携わらせてもらえない」という想いに駆られます。
家業のなかで迷いが生じていた時に、知人からジャパンタイムズの経営についての打診があり、一度は断ったものの、一念発起。2017年より、日本で現存する最古の英字新聞社ジャパンタイムズの経営者となりました。
当時、経営難に陥っていたジャパンタイムズ。そこで末松さんはさまざまな改革に取り組みます。
「まず、広告とコンテンツを分け、ステルスマーケティングを絶対にしないと宣言しました。次に、少子化をにらみ、学生向けの『スチューデントタイムズ』を、ビジネスパーソンも読める『ジャパンタイムズアルファ』にリブランディングしました。これはかなりいい業績で伸びています」
他にも出版社の設立や新たな媒体の発行、デジタル化など積極的な改革を進め、現在までに大きな成果を上げています。
さらに2020年4月、広島の地に、初めて文科省が認定した全寮制小学校「神石高原学園」を設立。「日本の教育のよさも取り入れ、海外進学への道筋もできる小学校をつくりたい」という想いから奔走したという、情熱とバイタリティに驚かされます。
後半は、佐々木かをりさんが進行を務め、さらに詳しくお話を伺います。佐々木さんは、末松さんが起業した1993年を振り返り、「私がユニカルインターナショナルを設立したのが1987年、88年から電子メールを使い、92年には『電子メールを使わない人とは仕事をしません』と宣言していました」と、まさにインターネット黎明期であった当時のリアルな体験を語りました。
そして、2人が出会ったのが1996年。佐々木さんが「当時、『父親に経営を習っている』とおっしゃっていました。どんなことを教えてもらっていたのですか?」と尋ねると、「家業は造船業で、その中に家がありました。仕事をしている姿をいつも見ていたので、腹のくくり方などはよくわかっていた気がします」という、凛とした答えが。佐々木さんも、「経営についてスキルとマインドに分けるとすると、最終的にはマインドのほうが重要ですね」と共感します。
さらに、ジャパンタイムズの経営を引き受けた際の想い、佐々木さんがそれを知った時の「びっくりしたけれど、(末松)弥奈子さんならできるに決まっていると思った」という感想など、経営者同士ならでは活発なトークが展開されました。
最後は、参加者から質問を募ります。「コロナ禍で変わったと思われる点は?」という問いには、「ジャパンタイムズでは、社員が家から新聞をつくっています」と末松さん。インフラが整っていたからこそ、新しい働き方にすぐ移行できたといいます。後手後手になっている日本の教育現場については、「タブレットなど、モノから入っていますよね。いきなり『やりなさい』というのは無理。教える側のリテラシーも大切」と、課題を指摘しました。
資金集めについて質問されると、「身の丈に合った経営の時と、ストレッチを効かせなければならない時があります」とのこと。資金調達する際の具体的な考え方などを、貴重な経験とともに話してくださいました。
「ゴール設定」について聞かれた末松さんは、「ゴール設定を考える時間がもったいない。それよりも、環境の変化をキャッチする時間のほうが大事。そのためには、人と会うことが大切です」との力強い答えが返ってきました。まさにこの後のブレイクアウトセッションへとつながる言葉を受け、佐々木さんが「皆さんも今日、ここで会った仲間が10年後、30年後に続いている、そんな出会いになるかもしれません。この後にぜひ、学び合いをしていただけたら」と呼びかけ、新たな出会いへ向けてセミナーが締めくくられました。
1993年学習院大学大学院修士課程修了後、インターネット関連ビジネスで起業。2001年株式会社ニューズ・ツー・ユー(現ニューズ・ツー・ユーホールディングス)を設立。2017年ジャパンタイムズの代表取締役会長・発行人に就任。2020年4月日本初の文科省認定の全寮制小学校「神石インターナショナルスクール」を広島県神石高原町に開校、理事長に就任。
学校法人神石高原学園 理事長
山口フィナンシャルグループ 社外取締役
ダイバーシティの第一人者。1996年から日本最大級のダイバーシティ会議「国際女性ビジネス会議」を企画・プロデュース、2000年から「イー・ウーマン」サイトを中心にダイバーシティ関連のコンサルティングおよび研修・講演。組織の多様性と成長性を分析する「ダイバーシティインデックス」を開発。また、内閣府男女共同参画会議、厚生労働省をはじめ多くの政府審議会等の委員を務める。世界銀行「女性起業家資金イニシアティブ(We-Fi)」日本代表。日本代表としてAPEC、OECD等国内外での講演も通算1,600回以上。これまで東京大学、上智大学など複数の大学、高校等で教鞭を執る。また、「アクションプランナー」と佐々木メソッドによる時間管理術は日本の時間管理・手帳ブームをつくり毎月の講座も「人生が楽しくなる」と人気。テレビ朝日「ニュースステーション」レポーター、TBS「CBSドキュメント」アンカーなど歴任。現在もテレビ、雑誌、新聞等のコメンテーターを務める。2009年ベストマザー賞受賞。2021年「ブルガリ アウローラ アワード2020」受賞。神奈川県横浜市生まれ。上智大学外国語学部比較文化学科卒業。米国ニューヨーク州エルマイラ大学に留学。2008年名誉文学博士号授与。2児の母。