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レポート

TOKYO女性経営者塾 by N E W
第3回目講座 V字回復の戦略

日時 2019年11月12日(火)15:00 – 17:00
講師 堀内 麻祐子(株式会社センショー 代表取締役)
進行 佐々木 かをり(株式会社イー・ウーマン 代表取締役社長、株式会社ユニカルインターナショナル 代表取締役社長)

覚悟の事業継承からV字回復へ
金融機関の協力、女性採用も成長の鍵に

女性経営者に向けた全5回の連続講座「TOKYO女性経営者塾 by N E W」、第3回のテーマは、ずばり「V字回復の戦略」。メッキ加工会社の3代目として事業を継承し、12億あった負債を2年半で完済した株式会社センショー代表取締役の堀内麻祐子さんに、事業回復のための戦略やノウハウを伺いました。進行は、株式会社イー・ウーマン代表取締役社長、株式会社ユニカルインターナショナル代表取締役社長の佐々木かをりさんです。

絶対に存続させる!意思と覚悟で事業承継

大阪は西成区にある「メッキの町工場」を、実質的な経営者であった父親が病に倒れたことで引き継ぐことになった堀内麻祐子さん。それ以前は「自分とは関係がない」と感じ、工場にほとんど足を踏み入れたこともなかったといいます。そんな堀内さんの目の前に残されたのは、「雨漏りでずぶぬれになるぐらいの築40年を越えた工場、老朽化した設備」、加えて12億の借金でした。

「とにかく会社を存続させたい。社員がメッキという仕事に誇りを持って働いてもらうため、メッキの技術を次世代にバトンタッチするためにも」と考えた堀内さんは、13名の高齢社員、5名の若手社員を引き連れてセンショーという新会社を設立します。

なぜ新会社なのか。「12憶の借金を引き受ける覚悟を決め、会社を存続させる絶対的な意思を持って引き継いだからには、生半可な改革では実現できない」。だからこそ、「自分が全部を支配できる」新会社をつくり、それ以前の会社を買い取る形での事業承継を決断をしたとい言います。

金融機関の協力を追い風に、2年半で負債を完済

信用を取り戻し、設備投資のための資金を調達するには、まず負債を返済することが必要条件。そこで堀内さんは、知人の公認会計士、その知人の弁護士と司法書士に相談し、「合法的に返済しながら、新しい資金調達をできる事業承継」プランを実践していくことになります。

旧会社に設備と負債を残し、新会社から家賃等を支払い、その金額を取引銀行に返済する。そして新会社は別のメインバンクと取引し、実績を積み上げて、2年黒字決算を持って、資金調達へ。「2年半で完済できたんです。金融機関の協力も大きく、まず1度債務免除していただいて、12憶が約半分になりました」。

さらに2度目の債務免除で残債1億が免除されるという幸運にも恵まれ、「やっとお金のことがほぼ片付き、次は“人”だと思いました」。

女性採用で評価アップ、業績3倍へ

後継者不足、従業員の高齢化、設備の老朽化による廃業も多いというメッキ業界。「キツイ、暗い、汚いなどのネガティブなイメージがあるのか、理系大卒の求人を出しても出しても人が来ない」。

そこで堀内さんは、2013年の年初、数名の仲間と一緒にセンショー設立10年「2021年の方針」をつくります。1に、町工場からの脱却。2に、2021年売上10憶を目指す。3にダイバーシティ経営。「まずは女性を採用しないといけない」と思い、大卒女子のインターンシップ制度を利用。女性専用トイレやロッカーもつくって、「女性のあなたにしかできない仕事をつくる、という意味での女性の居場所をつくるようにしました」。女性が参加することで広がる仕事の幅に男性に気づいてもらう、という意図もそこにはあったといいます。

その後女性の人数が増え、「女性でも働けるメッキ工場なんだ」という安心感で男性社員も増え、社員の平均年齢は32歳と大きく若返り、それがイメージアップ効果につながっていると堀内さん。「将来性を感じる会社だと、金融機関の評価も上がり、顧客の新規開拓や資金調達もしやすくなりました」。

昨年は、大会社で工場長などを経験した管理職、部長クラスを3名採用。取引先からの信頼も厚くなり、今や業績は3倍!

「90年近く守り続けた技術を次世代に引き継ぐのが私の使命。一人でも多く、メッキという仕事に誇りを持てる若い世代の社員を育てたい。その身体の底から沸き起こるような情熱がターニングポイントを乗り越えていく原動力だと感じています」

V字回復の、その先に必要なのは

後半は、佐々木かをりさんの進行によるトークタイム。会場からの質問もまじえてインタラクティブに議論します。

先ほどの堀内さんのお話を受けて、佐々木さんが「12億が半分になるという魔法のような(笑)債務免除のいきさつ」を尋ねると、「ちょうどその時、相手の信用金庫が経営再建なんとか機構に認定されたタイミングで、対象の4社の一つにうちが選ばれたんです」と堀内さん。

そこで佐々木さんからは、「皆さんもご存知だと思いますが、金融機関は融資を行う際にいろいろとキャンペーンがあります。例えば少し前にダイバーシティ経営という融資がありましたし、現在は環境関連でもあります」と、会場に向けてのワンポイントアドバイスも。

「V字回復でゼロになればいいということでなく、そこからさらに業績を上げて行くために必要なこと。一つは“人”だとわかりましたが、他には何がありますか?」という佐々木さんの質問には、「やはり設備投資です。設備投資することで、社員のやる気につながり、売り上げも上がっていきました」。

その後会場からは、製造業の後継者問題、技術の継承や横展開、女性の居場所づくりについてなど、さまざまな質問と答えが飛び交います。

最後に佐々木さんが、「堀内さんが大切にしている経営者としての心構え」を問いかけると、堀内さんは「考え続ける情熱です」と、静かにきっぱりと答えました。

堀内 麻祐子
株式会社センショー 代表取締役

1932年創業のめっき加工会社の3代目として事業を引継ぎ、2011年4月株式会社センショー設立、代表取締役に就任。先代の会社を買い取り、12億あった負債を2年半で完済、その後は積極てきな設備投資と人材の採用、育成に取組み、設立から7年間で2つの工場を稼働させ、3拠点体制を築く。「女性だからといって出来ない事は何もない」という考えのもと2014年から女性活躍推進に取組み、その効果で優秀な若手社員が急増、現在は社員数、業績共に設立時の3倍に成長。2015年 大阪府鍍金工業組合 創立100年で初めての女性理事に就任。2017年 全国鍍金工業組合連合会 女性経営者部会 会長に就任。2018年より大阪市中小企業対策審議会 委員、全国中央会 女性部活性化委員会 委員、2019年 厚生労働省 臨時労働委員 中央最低賃金審査会委員を歴任。

佐々木 かをり
株式会社イー・ウーマン 代表取締役社長
株式会社ユニカルインターナショナル 代表取締役社長

大学卒業後に通訳や翻訳を提供するコンサルティング会社ユニカルインターナショナルを、2000年に「ダイバーシティ視点でイノベーションを起こす」をミッションにイー・ウーマンを起業。日本初のダイバーシティを数値化する「ダイバーシティインデックス」を発案するなど、ダイバーシティをテーマに国内外で数多くの講演をしている。内閣府規制改革会議を始め、経済産業省、総務省、厚生労働省、法務省、文部科学省など政府各省の審議会等で委員をつとめている。2018年には世界銀行主催の女性起業家を応援する組織We-Fiの日本代表チャンピオンに任命、さらに世界の2000名の女性経営者が所属する世界女性経営者組織(WPO)の日本支部代表に就任するなど、女性起業家・経営者をリーディングしている。

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